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ガーザスの戦い
総力戦の日、明朝。
それぞれの兵がぞろぞろとガーザスに集まり、国境から約500メートル地点に隊列を組み始める。
数万人と集まっているはずの光景に、異様なほどの静けさと緊張感が漂っている。
今回の戦の総大将、マドロック・ローガン(35歳)は全体を見渡せる高台に布陣している。
ざっと見渡したところ、こちらの兵約1万5千に対し、インセンスの兵は3万といったところだろうか。
インセンス帝国は国土もグリーフ王国の倍ほどあるため、数の力では圧倒的だ。
それでも今日まで戦ってこれたのも、ラストアーマーを開発するほどの有能な科学者、戦場で個の力を発揮する兵が多かったためである。
ローガンの補佐を務めるのは、ローガン隊の副隊長フレミング・マーレ。26歳。スタットの同期であり、ローガンとともにパラディン隊の隊員を務めていた事もある。
「数では圧倒的に不利ですね、隊長。それにあちらには猛将、ガーランド・シエンがいます。簡単には押し切れないかもしれません。」
インセンス帝国の総大将、ガーランド・シエンはグリーフ王国で言うところのパラディンの立場である。圧倒的な猛者の風格、左眼の眼帯がそれを一層助長させている。
「"パラディン殿にやられた傷"が疼いて出てきたか、シエン。」
かつてパラディンとシエンの激闘を見ることしか出来なかった過去を思い出しながら、ローガンは続ける。
「しかし、ここで奴を討つことができれば、戦争の終わりは目と鼻の先だ。これはチャンスだ。」
ローガンは耳に手を当て、通信機を起動させる。ラストアーマーはフェイスメットの中に無線が組み込まれており、通信する事が可能だ。ローガンはグリーフ兵"全軍"に無線を送る。
「いいか!諸君!これはただの戦ではない!明日を決める戦いだ!お前達には愛する家族や恋人、友がいる。そいつらを泣かせることはわたしは決して許さん!!国の為ではない!己の為に!必ず!生きて勝利をもぎ取ってこい!!今日をもって!戦争を終わらせるんだ!!!」
「「ウォーッ!!マドロック・ローガンばんざーい!!!」」
ローガンの激励に兵の士気は最高潮に達した。各隊長も微笑みを浮かべそれぞれの闘志を燃やす。
「全軍!!かかれーーっ!!!」
ローガンが指揮を出すと兵は雄叫びを上げながら一斉に走り出した。
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