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(グランが止まったか… ここからは私たちの番だな)
先頭の様子を確認したスタットは部下達に指示を出す。
「これより、私たちは右から中央に斬り込む!中央の援護だ!ただし、死にたくなければグランの戦いには手を出すな!」
部下達の呼応を合図に、スタットも前にでる。
「あれは、グリーフ・オブ・グリーンだ!!」
「奴を討てば一生遊んで暮らせる報酬が手に入るぞ!!かかれーっ!!」
スタットを見たインセンス兵は怯えるどころか目を輝かせて襲いかかってきた。
(微塵も怖れず向かってきたか…!いいだろう、身を以て知るがいいさ…!)
スタットは2本のダガーナイフ、『ハートカット』を取り出して次々敵を斬り裂いていく。
スタットの真骨頂は反応を極めた圧倒的な回避能力。
グランの大鎌ように特注の専用武器を使う訳ではなく、あくまでシンプルで、派手さはない。
しかし、敵はかすり傷を与える事もなく、ただ倒れていくのである。
「だめだ…!まるで当たりゃしねぇ!バケモンだ…!」
インセンス兵が少しずつ恐怖を抱く中、スタットの後ろからロアも剣型の武装、『ワールドストリーム』を振りながら出てくる。
「余所見をする暇なんてないだろっ!」
闘志を燃やしたロアも次々と敵を斬り裂いていく。
「なんだ!?スタットの後ろにいるガキもやたら強いぞ、気をつけろ!」
おののくインセンス兵に対してロアは追い打ちをかけていく。
しかし、ロアの剣を受け止める敵が現れた。敵の"軍隊長"だ。
実力で言えばグリーフ王国の副隊長相当に当たる。
「止まれガキ…」
メット越しにその男の顔を見たロアは怒りで震えた。
何故ならそれは過去にロアの街を襲い、母親を殺した男だったからだ。
「…俺はついてるよ、母さん。まさかこんなに早く、こいつをやれる日がくるなんて」
ロアの声は感情の昂りで震えた。
「どうも最近何かと恨まれることが多いようだ。人違いなんじゃないか?俺は殺し損ねたガキは覚えていない」
軍隊長の男は澄ました顔で言う。
「お前は死ねぇぇぇえっ!!!」
ロアは叫びと共に男に向かってワールドストリームを振り回す。
「ガキのくせにやるじゃないか。攻撃は重いし、スピードもある。だが、動きが単調で読みやすい。俺の敵ではないな。」
男が剣を打ち返すとロアは反動で吹き飛ばされる。そして倒れ込んだロアに襲いかかろうとした。
(くそっ!俺はここで死ぬのか…!)
ロアが振り下ろされる剣に目を閉じた瞬間、スナイプスターの一撃が男の首を貫く。
軍隊長の男はそのまま絶命した。
男を撃ったのは、スタットだった。
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