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「うるうって本当に何でも持ってるよね。羨ましいな」
友達の一人がそう言った。私の事を褒めているのか妬んでいるのかどっちとも取れる言い方だ。
「そんな事ないわ。親が金持ちなだけよ」
これは嘘だ。親が金持ちなのは私のおかげだ。
「えー、でも下次さん男子にもモテるよね。こないだかっこいいって評判だったあの男子を振ったあと、すぐに別のかっこいい男子と付き合い始めたし。それで悪い噂が立たないなんて下次さんの人徳だよね」
別の友達がおべっかを使う。
当然だ。振った男子は都合の悪い事を話さないように、人格を操作してある。
私たちは放課後ショッピングモールで買い物を楽しんでいた。と言っても私が買うところを他の二人が見ているだけの買い物だったが。
私はふらっと店に入り、何気無く商品をいくつか手に取った。どれもブランドもので、結構な値段がする。私は会計をするためにレジへと商品を持っていく。店員が値段を告げ、包装する準備をする。その隙に私は意識を集中させると、店員の周囲に黒いオーラのようなものが見えた。その漂うオーラは所々で渦を巻き、ブラックホールのような黒点をいくつも作り出していた。私はその中の黒点の一つを指でつまみ、口に放り込み、咀嚼して呑み込んだ。
店員が包装を終えて商品を差し出す。私はそれを受け取って店を出た。私が代金を払っていないことを、店員も友達も誰も気にしない。
これは私が物心ついた頃からできた特技だった。私は人の周囲にその人が持っている物の所有権のイメージを見ることができて、それを取り込むことで対応した物の所有権を奪う事ができるのだ。
だから私は昔から何でも手に入れることができた。親の仕事も、私が手を出して莫大な金が手に入るよう仕向けた。人の心だってそうだ。私は文字通りの人心掌握ができる。その人の心の所有権を奪ってしまえば、まさに傀儡と化す。ただ、幼い頃はそれをやり過ぎて飽きてしまったので、今はたまに遊ぶ程度にしか使わない。そう、気に入った男の子の心を奪ったり、その男の子に彼女がいたりした時には彼女から彼氏の所有権を奪ったりと言った具合にだ。
今一緒にいる友達は所有権を奪ったりなんてしていない。でもブランド品や飽きた男の子なんかを渡してやれば尻尾を振って私についてくる。特技を使わなくても、人の心なんて簡単に操作できた。
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