母の憂鬱

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母の憂鬱

いつもの様に学校から帰ると 日頃からヒステリック気味の母がいつもの如く小言を言っていた。 「なんでわざわざ住宅街に,,,」 いつもと違うのは小言の内容。 母が言う小言は父の文句ばかり 今日は違った。 「どうしたの?」と それとなく反応してみると まるで独り言かのように母は続けた。 「今年、近くの空き地に、、ほらあんたが子供の頃よく遊んでた。あそこに遺体安置所ができるって」 母は続ける 「こんな所に造らなくたって、ねぇ、ましてや住宅街に。 どんな思いでこの土地に家を買ったと思ってるのか。いい環境だと思ってたのに、お父さんの安月給で買ったってのに。」 台所でもくもくとキャベツを刻みながら 母はいつもの如く、独り言のように小言を言っていた。 俺はそれを横目に 自分の部屋に行き 鞄をベッドの横に放り投げ 窓の外の景色を眺めた。 高校に入学して2年目。 この部屋のこの窓から見える景色は 小学校からの帰り道に見た景色と変わらない。 トカゲ山からは今日も黒い煙が昇っていた。
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