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1  高校に入学したすぐのことだった、中庭での部活動勧誘の賑わいを横目に音桐壮二(おとぎりそうじ)は廊下を歩いていた。  何か部活には入るつもりではあるけど、背も小さく、冴えない見た目の自分はああして手厚く勧誘されることはないのだろう。  ぼすり。前方から歩いてくる何かと衝突した音桐は後に勢いよく倒れ込んだ。  まず目に入ったのはスカートから飛び出た2本の足が床に投げ出されていることだった。  それで自分が衝突したのが女子生徒であったことに気付く。 「す、すいません。お怪我はなかったですか」  音桐は上擦りながらそう言った。ただでさえない自分がここで対応を誤れば、今後3年間女子生徒たちからの扱いがどうなるかは予想できた。 「ええ、私は何とも。音桐くんは大丈夫ですか」  さえずるようなソプラノが響き、音桐はそこで初めて相手の顔を見た。  星合桜子(ほしあいさくらこ)。同じ学年同じクラスの女子生徒だった。清楚で整った顔立ち、艶のある長い黒髪、そして入学試験主席。早くも音桐の学年のスクールカーストの頂点に立ち始めたのが彼女だった。  音桐が自分と同じように何ともなさそうなことに気付くと彼女は微笑した。     
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