霧散した恋

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八神はふーんと言って俺を見ている。 しばらくして予告が終わり、上映上の注意やマナーについての映像が流れる。 足を組み直し、心を落ち着かせ、集中する。 「え?」 突然右肩が重くなる、八神が頭を乗せてきたのだ。 「おいっ、なんのつもりだ」 「映画館ではお静かに」 八神は勝ち誇ったような顔でニヤニヤしている、その頭に軽く頭突きをしてやった。 「離れろ、重い」 「ほら、始まるよ」 スクリーンには映画の本編が映し出される。 「おい、始まるから早く離れろ」 「やだよー、キスしてくれれば考えてもいいけど」 「おい!」 無意識に語気が強くなる、映画の冒頭が始まった。
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