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頭をどかすためにこれ以上ここで体を動かすのはほかのお客さんに迷惑がかかるし、自分としても映画を愛する人間としてそのような行為をするのは心が痛い。
横目で八神を見た、口元を緩ませながら映画を見ている。
俺も映画を見た、知らないおばさんが二人も増えてる。
吹き替えの声優は俺の好きな声優さんだ。
映画を観賞したい気持ちに駆られ、俺は決断を誤った。
ストローを口に咥えている八神の髪を強引に掴む。
「え?ちょっと!」
顔をこちらに向かせ、自分の唇を押し付けた。
温かい唇の感触と、八神の口の中の生ぬるいアップルジュースを味わった。
「な、なに…考えてんの」
俺はそれに答えずスクリーンを凝視した。
映画が終わるまで黙ってくれるだろう。
現に八神は状況を理解し、下を向いている。
隣の席のお姉さんが俺を見つめていたが、気にしない。
映画はもうとっくに始まっている、それどころではないのだ。
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