墜雫‐レガシー‐

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墜雫‐レガシー‐

 二つの水音が聞こえてくる。  雨と波の音――二つともボクの好きな音、晴れの日は空が青すぎる気がして昔から雨か曇の方が好きだった。聞いていると心が静まるようで、  身体には力が入らない、いくら雨に打たれても目はぼんやりしたまま醒めてくれない『(オワリ)』が、『()』がすぐ側まで近づいている――だが、恐くはない。むしろ子守唄の包まれるような安らぎすらを波と雨の音に覚えられた。  全てやり遂げた――後はこのまま微睡みに身を任せて沈み切って底に着くのを待つだけ。 『――――ッ!!』  暗闇と無音が訪れたのを感じた直後、頭の中に声が響いた――その瞬間、最底にまで沈んだ意識が浮上した。 「ッ……」  目が開いて飛び込んできたのは見知った少女の顔だった。そして、こんなに激しく雨が降っているというのに彼女が泣いているのだと一目で分かってしまった。 ‐自分は何を考えていたんだ‐    目が覚めた――安寧に浸っている暇など自分にはないことを思い知る。彼女をここまで悲しませた自分がのうのうと眠りつくなど許されない。だが、鮮明になった意識は再び沈みかけていることをハッキリと感じ取っている。 ‐今度、沈めばもう浮上することはない‐    考えなければ――彼女の為に何が出来るのかを、この忌野際の無力な自分に。  そもそも、自分の無力さが招いたのがこの結末だ。目の前のこの()を助けたいと思ったのにこのザマだ。  悔しさが込み上げてくる――大切な人を守る事が出来ない。蓋をして目を背けていた未練が胸の奥から溢れてくる。  でも、それはもう叶わない事だ。もうチカラも時間もない。いくら、怨嗟を訴えた所で時間は伸びたりなどしない。むしろ時間の無駄でしかない。  探さなければ。残された時間でこの僅かな命でこの()にしてやれることを。                §§§
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