第2話 変身‐ライドオン‐

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「あ……ヤバい」  アーマーの沫散――変身解除したその瞬間、海翔は立ちくらんだ。眩暈がして堪えようにも全身に疲労感と激痛が一気に襲い掛かってきて身体は硬直して身体は傾いて頭からから倒れこむ―― 「あれ……」  思わず目を瞑ってしまう――直後には地面の感触と衝撃がすると思ったのだが存外にふわっと優しい感触がした。目を開いてみたが何も見えない、顔に触れてるのも土の感触とは違った。  起きようとすると後頭部にも何か当てられてるのを感じる。 「大丈夫……?」  そこに七海の声が上の方で聞こえてきてようやく状況を察した。多分、七海の上半身にのっかてるのだろうと。 「大丈夫……です……うん」  だけど身体が動かせない。感覚はあるのに極度の疲労状態に陥ってるのか頭も回らない。とりあえず顔を横に向ける……何か声が聞こえた気がする。 「ごめん、うごけない……」 「わたしも……」  まさか、自分を受け止めたせいで動けなくなってしまったのかと思い反射的に体が動きそうになったが激痛が奔ってそのまま沈んだ。 「どこか怪我を?」 「ううん……腰が抜けちゃって……」  無理もない。怪物の群れに水中コースター……こうして書けばテーマパークのように聞こえるが、いずれも作り物でもない上に危険度も段違いな代物を体験させられたのだ。怪我ではなかったがどの道自分のせいには変わりなかった。 「僕をどかして……ゴミのようにその辺に転がしてくれていい。そうすれば……」 「そ、そんな事できないよ……!!二度も助けてもらった人をそんな粗末な――」  自分なんかゴミのように転がしてくれていいのにと思いながら説得しようと思ったが疲れすぎて語彙を編む事が出来ない、彼女を説得する力はもうない。自分を手厚く受け止めている彼女とこのザマの自分とでは余力の差がありすぎる。   因みに『ゴミの様な』という下りを除いて頼めば応じてくれる可能性があったのだが息を吐くようにこの語彙を選んでいる海翔には不可能だった。 「そうだ――頼まれてくれないか」 「どうしました――?」  あまり負担や迷惑をかけたくないのだが自力で動けないため仕方ない。自分一人なら自力で帰れるぐらいに回復するまで何なら数時間だろうと我慢はできるが彼女を自分の自業自得の我慢の巻き添えにするわけにもいかない、ましてやこの冬の寒空の下なら猶更だ。
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