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「えへへへ……お腹すいちゃったね」
「そうだね、ご飯手伝いに行こう」
ベッドから身体を起こす。すると、まだベッドに寝ころんでいる海花の姿が目に入った。
「起こして」
「もう」
寝ころんだまま伸ばされた手を掴んで引っ張り上げる。するとまだ少しだけ身体が痛んで
、そこに海花が飛び込んできた。
「ぎゅー……」
そして、再び抱きしめられて、また頬摺りをされる。
「姉さんのお気楽、能天気」
でも、それでいい。
そのままでいい。
日常の裏側はどうか、知らないままでいい。
「先に行ってるね~」
「うん」
彼女の背中を見ながら胸を握った。
この痛みは隠し事をしているせいだけじゃない。
「もう、貴方から何かを奪いたくない――」
痛みを堪えながら呟かれた声は誰にも聞かれることなく無人となった部屋の静けさの中にへと溶けていった。
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