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「今でも思うんだよ、あの子を……海翔くんを戦わせずに済んだじゃないかって」
あの姉弟と出会った時を思い出す。海花は高校二年生で既に現在と相違ない面立と上背をしていた。一方で海翔は今とは似つかない歳頃よりも小さな身体、そしてとても怪物に立ち向かう事の出来るような性格をしていなかった。
一緒にいる時は海花にピッタリとくっ付いて甘えていた。海花もたった一人の家族を愛して慈しんでいた。何時までも甘えるわけにはいかないのは分かっているだが世間に足並みを
そろえる必要はないと思っていた。
「まさかあの子があんなに変わるとは思わなかった」
「身長は成長期なら有り得ない話ではないだろう。心だって性格が悪い方にかわったわけじゃあない――」
「楽観視できない――『真面目』だとか『反抗しない』とか大人にとって都合が良いだけじゃないか」
「同感ではあるけど。君が悲観的なのも間違いない、完全な中立は難しいのは分かるけど。俯瞰してる位置から言っても無責任だとは分かってるけどさ」
彼女の言っていることが間違ってはいないのは分かっている。悲観に偏るのも楽観に偏るのも本質を見誤る確率を高めるだけだ。
「まだ、未練があるみたいなんだ。あの二人の良き父親代わりになってなりたいなんてこの期に及んで――」
「子供達と楽しく過ごしたいってのは別に親としては悪くないだろう。君も楽しいなら楽しい人が二人から三人に増えるだけだろう」
広海だってこんな事にならなければ本当はそうしたかった。ありふれてありきたりで平和な毎日を送っていたかった。
「運が悪かったんだよ。あの子を戦わせようが戦わせまいがどのみち苦しんでいただろうね、君は」
「もう流れを塞き止めることは出来ないんだ。私たちに出来るのはコレぐらいだ」
差し出されたのは3つのウォーシャナイト。彼女の言う通り、流れを止める事は出来ない。自分に出来るのは海翔をサポートする事、この三つのウォーシャナイトもその為に作ったのだ。
だが、それでも懸念がある。その力自体が海翔に危険を及ぼす可能性が高い事。それを確かめるためにも広海はパソコンにつながった機械にウォーシャナイトを差し込むとモニターにデータが映し出されていく。広海の目にスイッチが入り膨大なデータを目に通していく。
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