見切りをつけられる第二話「 初めての出席簿 」

1/1
前へ
/13ページ
次へ

見切りをつけられる第二話「 初めての出席簿 」

HR(ホームルーム)が始まると渡先生は 出席簿を片手に生徒達の出席を確認する。 僕は三年F組の生徒、斉藤(さいとう) 涼木(すずき)だ。 友人には、どちらも苗字にしか思えないと 言われているが僕もそう思う。 何故、両親は僕にこんな名前を与えたのか 不思議でならない。 ちなみに、僕には弟がいるが斉藤(さいとう) 多木(おおき)という名前だ。 弟に関しては、何とか苗字っぽくなれたかな っていうギリギリのラインを攻めている。 それよりも、新任教師の渡先生による 出席確認は悲惨なものであった。 僕は初めて自分の名前が大切に思えたのだった。 『 これより、この組織の本日の参加者の名を 呼びあげる。名を呼ばれた者は手を挙げるように。』 ー何故、普通にクラスと言えないんだ。 教室の中は静寂へと包まれていく。 松田(ゆうかんなる) 明里(ライトニング) 井上(しっこくの) 星大 (ビッグスター) 飛田(ジャンピング) (レインボー) 次は僕の名前が呼ばれる番だ。 何だろうか、このドキドキ感は・・・。 『あー・・・、斉藤(さいとう) 涼木(すずき)。』 先生はこちらを見ようとはしない。 他の生徒達は僕に熱い視線を送ってくる。 何だか渡先生に打ち勝った気がした。 初めて、父と母がこの名を付けてくれた事に 感謝する事となったのであった。 あれ? 先生はもしかしてそんな大切な事を 気が付かせる為にわざと皆んなの名前を 厨二病臭く読んだのかな。 その日、先生を少しだけ好きになれた気がした。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加