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見切りをつけられる第二話「 初めての出席簿 」
HRが始まると渡先生は
出席簿を片手に生徒達の出席を確認する。
僕は三年F組の生徒、斉藤 涼木だ。
友人には、どちらも苗字にしか思えないと
言われているが僕もそう思う。
何故、両親は僕にこんな名前を与えたのか
不思議でならない。
ちなみに、僕には弟がいるが斉藤 多木という名前だ。
弟に関しては、何とか苗字っぽくなれたかな
っていうギリギリのラインを攻めている。
それよりも、新任教師の渡先生による
出席確認は悲惨なものであった。
僕は初めて自分の名前が大切に思えたのだった。
『 これより、この組織の本日の参加者の名を
呼びあげる。名を呼ばれた者は手を挙げるように。』
ー何故、普通にクラスと言えないんだ。
教室の中は静寂へと包まれていく。
松田 明里
井上 星大
飛田 虹
次は僕の名前が呼ばれる番だ。
何だろうか、このドキドキ感は・・・。
『あー・・・、斉藤 涼木。』
先生はこちらを見ようとはしない。
他の生徒達は僕に熱い視線を送ってくる。
何だか渡先生に打ち勝った気がした。
初めて、父と母がこの名を付けてくれた事に
感謝する事となったのであった。
あれ? 先生はもしかしてそんな大切な事を
気が付かせる為にわざと皆んなの名前を
厨二病臭く読んだのかな。
その日、先生を少しだけ好きになれた気がした。
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