怒涛の第三話「 科学のじかん。 」

1/1
前へ
/13ページ
次へ

怒涛の第三話「 科学のじかん。 」

授業の開始のチャイムが鳴る。 生徒達は言われる間もなく席に着いていた。 一限目、それは渡先生による初めての授業。 " 科学 " の授業である。 先生による初めての授業に生徒達は 心臓のポンプの圧力を高めていた。 私は、相田(あいだ) 聖子(せいこ)。 渡先生による化学の授業は迂闊(うかつ)な 行動には出れない授業となったのだった。 『 これより、敵組織に対抗する為に化学薬品を 用いて爆薬を作成する。大変危険な為、ゴーグルを使用し安全に取り組むように。 』 目の前に並べられた薬品に生徒達は 手を震わせ息をごくりと飲み込んだ。 こんな授業、教育委員会が 知ったなら大問題だわ。 渡先生はやっぱり異常よ。 生徒達は渡先生の指導の元で 薬品を調合していく。 それはそれは慎重にだ。 少しでも分量を間違えたなら 生命はないだろう。 汗を握る作業に意識を失う者も出ていた。 「 相田、肩の力を抜け。大丈夫だ、俺が付いている。お前なら必ず作り上げることが出来る。これを作り上げる事が出来た時、お前はまた強くなれる。」 先生は私の肩に腕を回しギュッと抱き寄せ 作成の一部始終を側で見てくれていた。 何だか心臓がドキドキする。 少し見上げた先生の顔は 何処か切なささえも感じる。 もしかして、このドキドキは恋なのかな。 他の生徒が作成に失敗し負傷する中で 相田は爆薬の作成に成功する。 「 ・・・やったぁ、わ、わたし出来た。 先生、私ッ・・・。 」 先生は優しい微笑みでこちらを見つめて 頭をそっと撫でてくれた。 『 お前は凄いよ、こんな危険な薬品を調合して 爆薬を作り上げてしまうのだから。 』 他のクラスメイトは盛大な拍手を私に送った。 あれ? 先生はもしかして危険な実験をする事で 生命の大切さを教えてくれたのかな。 そんな先生の温かさに私は惹かれ始めていた。 渡先生は、素敵な先生なのかも知れない。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加