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二人は細い通路を入っていく。
どこからか光が入り込んでいるのか。洞窟の奥はそこまで暗くなかった。
「未解読文字のオンパレードだな......」
「なにせ232種の特殊読みと421種の読み返しだぞ......この壁に書かれてある文字の解読だけで、何年かかるんだ」
狭い通路の壁をなぞりながら、真一は言う。
「おっ、抜けるぞ」
何度か曲がると、通路の奥に光が見えた。
そこまでたどり着くと、
「......すげぇ」
広いドーム状の空間が広がっていた。
中央に聳え建つ、石造りの巨大な祭壇。
その左右に立つ何百という柱。細かな装飾が施されたそれもまた、文字で埋め尽くされている。
ドーム上部には大きな穴が空き、日光を祭壇中央に当てている。
神秘的。そんな言葉が相応しいだろう。
まるで真に神が此処に居るように、何千年と放置されてなお静寂なる美しさが残る。
二人は暫く、声も出さずにただ眺めていた。
「登るか」
「ああ」
急な石段は苔が生えて滑りやすく、注意しながら登っていく。
コツコツと二人の靴底が石を叩く音だけが響く。
頂上。幾層にも、少しずつズラし重ねられた正方形の石枠。
稲荷神社の鳥居を思い出させるそれを跨ぎ抜け、その先には、
「こいつは、また......」
祭壇の上に広がっていたのは、小さな花園だった。
日光が当たった祭壇頂上だけ苔はなく、赤い花が咲き乱れていた。
その中央。二体の石像が互いの拳をつき合わせている。
その石像の間。置かれていた、一枚の石板。
「これが......〈ベツレヘムの石板〉」
祭壇中央に飾られる程のそれには、いったい何が書かれてあるのか。
「解読できるか?これ」
「してみせるさ。俺たちにかかれば.......十年で終わらせてやる」
光差し込む石塔の上、二人は再び、決意を胸にしたのだった。
「おい!とりあえず写真だ写真!」
二人は肩を組み、満面の笑みでフラッシュを浴びた。
その時、ゴォンと重い音が響き、大きく祭壇が揺れた。
ドームに開いた穴から、一斉に飛び立つ鳥達が見える。
その音と衝撃は、暫くの間続いた。
「おいおいおい。この祭殿、自壊機能でも付いてんのか!?」
「いや、この衝撃は外からだ。地震とも違う。これは......」
刹那。二人の上を、三機の飛行機が過ぎて行った。
「あれは......!」
「爆撃機だ!レイアの村は!?」
石段を駆け下りる。
想像する『最悪』が、二人の足を早めた。
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