回想回

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街で唯一原型を残した建物の陰(・・・・・・・・・・・・・・)に、並べられた怪我人達。 寝ている人と、慌ただしく動き回る人。全てを足しても、街人の数には遠く及ばない。 無差別爆撃。 政府に中指を立てるためだけの大量虐殺は、無慈悲に人を粉々に消しとばした。 既に爆撃から二時間は経過していた。 だというのに一向に来る気配のない救援。この国の荒みが、一人また一人と死んでいく此処では嫌という程感じられた。 『あんたらも手伝ってくれ』と、皆を指揮している男が叫ぶ。 ──こういうことは、アイツが率先してると思ったのに。 レイアは奥の方にいた。 薄い、麻の布を胸まで掛けて寝ていた。 『レイア......!』 走って駆け寄る伊吹。 しかし真一は、この周辺には人が来ないことに気づく。 重い怪我をしている人も多いのに、誰もやってこない。 そして同時に、この周辺は静かなことに彼は気づいた。 だって、隣で寝ている女性に縋り付く子供の嗚咽が、こんなによく聞こえる。 『レイア!レイア起きてくれ!俺だ、信だよ!大丈夫か?どこを怪我してる?』 レイアの横に座り、怪我の様子を確認しようとした伊吹に、共に夜飯を食べる仲間だった少年が、死んだ表情で言う。 『腰より下は見ない方がいいよ』 『何を言って......』 忠告を聞かずに布を捲った伊吹は、固まり、 『うっ、おぇぇ』 思わず脇に吐いた。 『ほら、言った』 死んだ目の少年が、痩せた膝を抱えて言う。 『お姉ちゃんの顔があんまり傷つかなくてよかった。好きな人には綺麗な顔で会いたいもんね』 死んだ感情でそう笑った彼。 『知ってる?お姉ちゃん信君のことが──』 彼の言葉は伊吹には届いていなかった。 なぜ気がつかなかったのだろう。 レイアの隣に寝ている『誰か』は、頭から布をかぶっているというのに。 こんな怪我人が多いのに、この一角は呻き声のない事に。 「死体置き場......」 ▽ 石板の発見は、世界中で大きなニュースとなり、その発見者である二人は、大きな拍手に迎えられ、空港に降り立った。 空港から直で会見会場へ行くために、報道陣の列を抜けてロータリーへと歩く。 「お帰りなさい。二人とも」
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