回想回

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車の前で待っていたのは、優しく微笑んだ桜と、彼女のズボンの裾を掴み、指を咥えたユウキ。 「ああ、ただいま」 ユウキを抱き上げた真一。その上から二人を抱きしめた桜。 どこからか集まったカメラマン達が一斉にシャッターを押す。 親子三人の微笑ましい光景の中、嗚呼。どこかで見た死んだ目をした男は思う。 ──平和だな。 憂鬱になるほどの晴天だった。 ▽ 石板のレプリカを作り、大学で、伊吹の『mark.27』と真一の同時解読が始まった。 彫ってある深さまで解読に関係するという恐ろしい言語だったが、それでも二人はゆっくりと、しかし着実に解読を進めていった。 解読開始から四年ほど経ち、 「どうやらこれは、予言のようだ」 との結論に至る。 「此処から下は全て、西暦に直すと1900年からの記述だと思う」 「ああ、そうだな」 「一番下は、二千......その先はまだ読めないか。だが記述がここで終わっている」 「人間滅亡でも予言したか?」 「わからない。だが、十分にあり得るぞ......!」 ノストラダムス、マヤに次ぐ大予言が、此処にあるかもしれなかった。 ▽ 「なぁ真」 ある日、帰宅しようとした真一を呼び止めて伊吹は言う。 「一つ、提案があるんだ」 「......どうした?」 鞄を机の上におろし、問い返す。 「もしコイツが、本当に予言だったら、世間に発表せずにいないか?」 低い夕日が研究室に差し、影となった伊吹の顔は見えなかった。 だがその一言だけで真一は察する。 「〈爆弾〉に変えようということか」 日本に帰ってきてからも、二人のキャンサーとの戦いは続いていた。 実際、上位レベルなどと戦うことも多くなり、苦戦を強いられることが多いのは確かだった。 〈世間に与える衝撃〉に比例する伊吹の爆弾の爆薬を、〈予言〉にすれば恐ろしい威力を出せる。 「難しいところだ。まずどうやって騙す?法則性を聞かれて、適当を言っても直ぐにバレる」 「『まだ解読中です』を永遠に続ければいい。どうせもう、殆どの人がこの石板のことを忘れてるよ」 そう言った伊吹は、小さく続けた。 「......あの内戦のこともな」
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