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パチンと、指を鳴らす伊吹。
同時、ドーム壁面に書かれた文字達が真黒の光を放つ。
指向性を持ち、放出。文字から伸びる黒光が、何千本と半球に刺さる。
低い音がドームに響く。
それはだんだんと耳をつんざく高音へと変わり、同時に半球が、熱せられた鉄のように赤く赤くなっていった。
ゴォンと、地面を揺らす一際大きな音。
思わず転びそうになったユウキを伊吹が片腕で支える。
「来るぞ」
半球が、ゆっくりと浮き上がっていく。
台座に埋まっていた下半球が顔を出し、超高エネルギーを蓄積した核が空へと昇る。
ドームを抜け、雲を刺した。
安定性を失う霊層。紫電が雲に奔る。
「うわ。雷だ」
先程までの轟音に完全に怯えていたユウキが、雷にも少し恐怖する顔を見せた。
「大丈夫。すぐに晴れる」
伊吹が次に指を鳴らすと、太陽が音も無く、エネルギーを拡散。
余りの眩しさに目をそらす二人。
目を開けた時には、晴天が広がっていた。
天に座す爆弾の王。
全霊層が吹き飛ばされた空。
言語世界の空も青かった。
まるで絵の具で塗りたくったかのような青。
──気分の悪くなる晴天だな。
ドームの天井穴から射す光を浴びながら、自嘲気味に伊吹は笑った。
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