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そして二人はそのまま、大学で研究を続けた。
「だから!俺の全自動解読マシーンmark.4はその文字を魚って言ってんだ!」
「あぁ。ドイツ語すら翻訳できなかったmark.3の後継機か。それの百倍優秀な俺の頭が、その文字はワニだと言っている」
「おうおうおう。じゃあ『第203回どっちの考えが正しいでしょう大会』やるか!?」
「上等。レポートにまとめてきな!」
「バカヤロウ......!俺より先に結婚しちまいやがって......!しかも桜ちゃんかよ羨ましいなぁ」
「ああ、ありがとう信」
「幸せにしろよ!しなかったらぶん殴るからな!」
「わかったよ。それより、お祝いメッセージを象形文字で送るのは勘弁してくれ......」
「なぁ、俺達がこのまま年老いて行ったら、キャンサーは誰が倒す?」
「......そろそろ、二人だけの秘密基地も明け渡さないとな」
二人で歩んだ人生は、どれほど幸せだっただろう。
これからも、ずっと。
死ぬまで二人は親しく付き合い続けるだろう。
そんな確信が、伊吹にはあった。
▽
『ってな訳だ。超能力とか、ちょっと面白くなかったか?』
『いや、なんか凄い惚気話を聞かされた気分だわ......』
レイアは何故か呆れた顔をしていた。
『惚気?バカ言え俺は生まれてこのかた女の子に好かれたことなんて一度もねぇよ』
顎を突き出し、ふて腐れたようにそう言って膝に顔を埋めた伊吹を、レイアは少し、どこか嬉しそうな顔で見ている。
『へぇ......、そうなんだ』
『へぇってなんだよ......』
スックと立ち上がって、レイアは笑う。
『きっと貴方を好きな女の子はいるわよ。私が保証してあげる』
背後で手を組み、 腰を折ってそう言ったレイアに、
──それが、君だったらいいな。
そんな恥ずかしいセリフはしかし。
『だったらいいな』
伊吹はただ、そう笑って返した。
▽
「間違いない。遺跡はここだ」
地図を指差し、真一が言った。
「同感だな」
日が昇って間も無く、テーブルを挟み向かい合った二人が、興奮した口調で言う。
『もしかして、見つかったの!?』
『ああ、多分な。今日実際に行ってみて確かめる』
『そう......!』
朝食を運んできたレイアは、喜びと、どこか寂しさが混ざった声だった。
『行くぞ信。存外遠い。日が暮れる前に帰ってきたい』
『ああ、そうだな』
ガツガツと勢いよく朝食を平らげると、二人の制服である、白衣に着替える。
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