第1章 青春

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こずえが育った場所は桜で有名な秋田の田舎町。 日ごろから町を照らす灯りも少なく、月や星が出ない日は夜が来るのがとても怖かった。 特に冬になると雪が町を覆いだし、周りを白銀の世界へと変えて行く。 こずえはそんな冬の夜が大好きになった、夜は空が明るく別世界に来てしまったかのように不思議な気分になれるからだった。 ある日、ファインダー越しに景観を覗いてみると、限られたモノしか見えなくなるほど視界が奪われていた 。 ここは現実なのか、心の中の世界を見ているのか、その狭間を彷徨う。 意識を集中させると色んな音が聞こえてきて、それに応じながら写真を撮っていると心の余計なものが削ぎ落とされていく。 まるで子供の時に、見えていた世界に触れているような、やさしい時間がそこにあった。
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