序章 悪夢

2/5
前へ
/5ページ
次へ
 幼い頃の夢はなんだっただろうか……野球選手? サッカー選手? ミュージシャン? タレント? もう既に遠い日のことで、頭の中にも残っていない。 ……いや、違う、私は確か、作家になりたかった。 人々を感動させる作家になりたかった。幼い日に読んだ作品は、今でも私の心を蝕んで離そうとしない。私に、諦めるなと語りかけてくる、いい迷惑だ。  何かに憧れていたあの頃の私が、今の私も見たらなんと言うだろうか? おじさんは誰? いや、ソフト過ぎるかな……幼い子供は人にとって痛いところを突いてくるものだ、きっと、もっと痛い言葉を突き刺してくるのだろう。 ……尤も、私の周囲には、純真無垢な子供などいやしないのだが……。  私は昔、どのような人間だったのだろう? 確かに遠い過去のことだ、それは間違いのないことだ、覚えていないのは仕方がない。だがそれにしても、もう少し覚えていても良い気もする。 どうして全く記憶に残っていないのだろう?
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加