プロローグ:『封印の間、の前にて。』

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 やらかした、とは思った。  目の前いる人物は、重要人物であり、厳重注意人物である彼。その彼に捕らわれている白髪の彼は、血を流し、どうやら意識がないようだった。  白髪の彼は、俺にとってさほど重要な人物ではない。即答できる・・・それでも俺の親友にとって、大切な人物の中で、一番の支えである為、此処で失ってはいけない。  その思いから、目の前で不敵に笑う彼の前から、動くことが出来ない。 「主様(ぬしさま)には、選んでいただきましょう。まぁ、私にこれを助ける義理など一切ありませんが、この魔界人を助けるか、貴女が私の代わりに封印の間に入るか・・・。どちらがいい方法なんて、分かり切っていることですが、我らが主様は、自分か、親友の大事な人を選ぶか、どちらでしょうね。」  ゆったりとした動きとそれに似合った口調・・・口元の笑みは一切崩すことなく、目は明らかに挑戦的なそれに、この提案が本気であると確信した。 「・・・俺が封印の間に入って、お前が狛(ハク)を助ける保障なんてねぇだろ?」 「私は、嘘なんて吐くようなことはしませんが、では、先に封印の間に貴女が入った瞬間、完全に回復させるという法(ほう)を私がかける、というのはどうでしょう。」  馬鹿にしたような笑みを零す彼に、眉間に皺を寄せてしまったのを、息を吐いて落ち着かせる。 「・・・分かった。お前の代わりに俺は封印の間へ行こう。その前に、ハクはどうしてお前に会いに来た?」 「分かっていて、聞くんですね。・・・大事な、大事な弟君の為・・・黒が彼を染めず、潰されない様にする方法・・・を知りたい様でしたよ。天が魔の者になんて、教えるとでも思ったのでしょうか。」  クックックッと喉を鳴らして笑う彼の瞳は、足元の狛に向けられており、その瞳は、嫌悪の色を強く放っていた。彼の嫌悪の視線は、明らかな憎悪が窺える。  彼が封印の間に入れられることになったのも、魔界人への復讐、が理由だった。同情できる部分もあったが、天界では、殺生を行なった者に関しては、封印することで罪を償わせることになっている。  封印の間=牢屋という訳で・・・、更に俺自身が作った空間の為、封印の間の内部からすぐに解くことは不可能だろう。  まさか、自分が入るとは・・・と内心呟きつつ、『空(ソラ)・・。』と遠くにいるはずの守護部隊である八龍(ハチリュウ)の内の一人、空龍(クウリュウ)に呼びかける。
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