2/3
前へ
/16ページ
次へ
「彼が一時の動揺や気の迷いであなたを求めたとでも? 普段の彼を知っているくせに! よくそんな事が言えるものですね!」 「声が大きいですよ、白金くん」  朔弥は凪彦の側に寄り、声を落とした。  凪彦は朔弥を睨んだまま、「あなたがそうさせてるんです」と言った。 「今もそうやって……優しいフリで僕を勘違いさせる。あなたの特別に……なれるんじゃないかって」 「白金くん、それは……」 「もう良いです。隠しません。僕は、青木と同じなんですよ」  あなたは、知らない。  自分がどんな目であなたを見ているか。  そして、何を求めているか。  拒まずに、そばに寄ることを許す――それが時に何よりも辛いことを、あなたは知らない。 「いいんです……僕は青木のようなことはしません。僕も、黒花先生にとっては、ただの悩みを抱えた教え子の1人なんですよね」  強気を装うつもりの瞳が震え、涙が溢れ出す。  ああ、これはまずいと凪彦は思った。  泣くつもりなんてなかったのに。  倭と同じことで朔弥を困らせたくなんてないのに――。 「あなたを愛してしまったんです、先生」  凪彦の声が震える。
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!

15人が本棚に入れています
本棚に追加