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「彼が一時の動揺や気の迷いであなたを求めたとでも? 普段の彼を知っているくせに! よくそんな事が言えるものですね!」
「声が大きいですよ、白金くん」
朔弥は凪彦の側に寄り、声を落とした。
凪彦は朔弥を睨んだまま、「あなたがそうさせてるんです」と言った。
「今もそうやって……優しいフリで僕を勘違いさせる。あなたの特別に……なれるんじゃないかって」
「白金くん、それは……」
「もう良いです。隠しません。僕は、青木と同じなんですよ」
あなたは、知らない。
自分がどんな目であなたを見ているか。
そして、何を求めているか。
拒まずに、そばに寄ることを許す――それが時に何よりも辛いことを、あなたは知らない。
「いいんです……僕は青木のようなことはしません。僕も、黒花先生にとっては、ただの悩みを抱えた教え子の1人なんですよね」
強気を装うつもりの瞳が震え、涙が溢れ出す。
ああ、これはまずいと凪彦は思った。
泣くつもりなんてなかったのに。
倭と同じことで朔弥を困らせたくなんてないのに――。
「あなたを愛してしまったんです、先生」
凪彦の声が震える。
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