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青木倭(あおきやまと)は明らかに、朔弥に対して恋愛感情を持っていた。
凪彦や何人かが朔弥に連れられて休日もどこかに出かけていると知り、夏の終わりにそのメンバーに加わったゼミ生だった。
そんな彼は、勉強やなにか体験するよりとにかく朔弥に構いたがった。
電車やバスに乗れば必ず隣をキープし、食事をすれば朔弥の選ぶものを真似する。
そのあからさまな様子に他の学生たちは若干「引き気味」であったが、本人はその空気を気にする様子もなかった。
「なぁ、白金……あいつ、どうしたら良いんだろ? 先生にベタベタしてんのに対して俺らが何か言うっていうのも、変な感じだし、かといって放っといていいのか微妙じゃねえ?」
困惑顔のゼミ仲間に対し、凪彦は「確かに」としか返事できなかった。
だが内心、倭に対するムカムカする気持ちは朔弥に懸想する女子学生たち以上だった。
陰で倭に対し「青木くんてなんかキモい」という彼女らに対し、心の中で思い切り頷いてしまう自分がいた。
(黒花先生は……イヤじゃないんだろうか)
凪彦は朔弥が何らかの方法で倭を拒絶してくれる事を期待した。
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