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だが、男子学生だからと気を許しているのか、倭がすり寄ったりボディタッチをするのを朔弥は全く拒まなかった。
それを見ていると、思わず割って入りたくなったり、あるいは胸を掻きむしりたくなったりするような不快感を覚えるうち、凪彦は自分も倭と同じなのだと自覚した。
(男に惚れる気なんか……なかったのにな)
きっと、先生だから仕方ないんだ。
凪彦はそう思うしかなかった。
先生と教え子の垣根を超えてみたい、もっと「触れたい」と思うのは明らかに恋だった。
朔弥が「縁がなかった」と嘆く過去の女たちを、凪彦は羨ましく思った。
例え今は関係が切れてしまっているとしても、彼女らは朔弥に触れ、彼の愛を受けることができたのだ。
(青木はきっと、先生に抱かれてもいいと思ってる)
自分だってそうだ、とはまだ思いきれないとしても、少なくとも彼に朔弥を盗られるのは嫌だった。
しかし、だからといって――。
(先生と僕が……どうこうなるとか)
そう考えると、とにかく自信がなかった。
朔弥の側にいることはできても、愛される存在になんてなれるわけがない。
その前に、この想いを打ち明けて良いものなのだろうかと、それすら分からない。
ゼミの合宿がとある温泉宿に決まったのは、そうやって凪彦がぐるぐると出口のない悩みを巡らせていた頃だった。
合宿には普段は「お勉強系」の集まりには一切参加しない浮ついた学生たちや、当然、倭も参加することになった。
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