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 ああ、あんなに筋肉あったんだ――そう思いながら、凪彦は努めて朔弥の裸を見ないようにした。  もはや同じ男である彼に対し、風呂場で冷静にいられない自分が嫌だった。  その反面、倭には遠慮がない。  風呂でも朔弥の隣をキープし、遠慮なく彼の裸を目で楽しんでいるように見えた。 「もうさ、青木のこと女子にばらしてやろうか?」  ゼミ仲間はうんざりした様子で凪彦に言った。  やめようよ、と凪彦は答えた。  女子はきっと、あっという間にキモいキモいの大騒ぎになるだろう。  下手をすればイジメになってしまうし、ゼミの雰囲気が悪くなるのも嫌だった。  そうなればきっと、朔弥は悲しむだろうと思った。 (嘘つきだな、僕。本当は自分が一番、青木をそういう目に遭わせてやりたいのに)  いい子ぶっているつもりはない。  そうではなく、朔弥のゼミに淀んだ空気を生むのに加え、自分が何か倭に対して卑怯な手に出ることで、凪彦が無意識に彼に対して抱いている「コンプレックス」に輪郭を与えてしまうのが嫌だった。  恥じらいもなく、心のままに好意を示し、彼の側をキープする。  凪彦にはそんな事ができる自信がなかった。  だが、合宿2日目の夜、そうやって自分を押し殺していた凪彦を大後悔させる出来事が起こった。  倭がついに、朔弥に体で迫ったのだ。
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