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「何で……あんな奴に優しくするんですか、先生」
部屋から出た朔弥は、廊下の奥から聞こえた凪彦の声にビクリと立ち止まった。
深夜1時。
睨むようにこちらを見る凪彦の様子に、すべてを見られていたのだと悟ったようだった。
「……仕事柄、不安定になっている学生の対応には慣れていますから」
どう返事を返していいか分からない様子で、朔弥はそう答えた。
まるで言い訳しているように見えて、凪彦はカチンときた。
中で何をしていたのか。
そう聞くと、話を聞いて寝かしつけただけだと朔弥は言った。
「思春期が終わる学生時代は……思いもよらぬ行動をしてしまうものです。同性であっても、自分を受け止めてくれる存在には依存心や、恋心に似たものを抱くこともある。そのうちきっと、青木くんもその事に気づくでしょう」
彼を責めないであげてください。
そう言う朔弥の態度が、凪彦をさらに苛つかせた。
「あいつの想いが、本物でないとでもいうのですか?」
朔弥の言葉に、凪彦は到底納得していなかった。
あなたは、冷たい。
一言そう言ってしまうと、もう言葉が止まらなかった。
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