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「美咲……」
聖司の声が彼女の名前を呟いたところで、成美は彼らの姿を視界から失くす。
悠太が未使用の控え室へと成美を引き込んだのだ。
ソファが一脚置いてあるだけの簡素な部屋に、ガチャリとドアの閉まる音が不穏に響く。
まるで、聖司と美咲の世界には足を踏み入れてはいけないとでも言われているようだ。
再会してしまったふたりの姿が焼き付いて離れない。
成美の胸をじりじりと焼き払うように痛めつける。
「行かせない」
成美を閉めた扉に押さえつけ、暗い眼差しで迫る悠太。
あのふたりもこんな風に顔を寄せ合っているかと思うと、途端に涙があふれてきた。
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