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急にずしりと感じた身体の重みに、目を開けようとする。
しかし、べっとりと貼りついた瞼は、聖司の意思に反して視覚を生かさなかった。
「……った……」
突如聖司を襲う激しい頭痛。
感覚の鈍い腕を上げ、痛む額を押さえた。
まだ身体が熱をこもらせているとわかる。
深く深呼吸をすると、重かった身体がさらにベッドに沈んだ。
(今さら、あいつの夢見るなんて……。相当、重症だ)
夢の中だったのに、身体には彼女が触れた感触が残っている気がした。
愛らしい声。指先に触れるさらりとした髪。
聖司を包む華奢な掌。
もう10年以上も感じていないのに、妙に鮮明に感じられた記憶。
そして、なぜだか心地のいい怠さが下半身にあった。
(どんだけ色魔だよ、俺……)
夢だったけれど、頭を撫でられる安心感は、変わらなかった。
あの小さな手の、額に残る感触を思い起こす。
すると、聖司は違和感に気付いた。
額に置いた自分の腕の下に、冷たい何かが貼り付けられている。
(……あ、れ……? )
聖司は額に掌を宛てると、明らかな異変に気がついた。
重い頭で思い起こす今朝の記憶。
体温を確認して部屋まで這ってきた。
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