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広いダイニングテーブルには、スポーツドリンクのボトルと風邪薬、それと、開封された熱冷まし用の冷却シートが広がっていた。
今朝、彼から送られてきたメッセージに、かすかな胸騒ぎを覚え、仕事終わりに新田聖司の自宅に足を運んできた。
【風邪ひてない?】
どうして突然そんな心配をされたのか不思議だった。
確かに裸のまま昼近くまでゴロゴロと抱き合ってはいた。
そのくらいで……とは思ったけれど、ふと彼の食生活が気になったのだ。
普段出来合いのもので食事を済ませているらしい彼の、栄養面を考えたときに、もしかしたらあまり健康的な身体とは言えないのではないかと。
もし仮に、彼が体調を崩していたとして、それをわざわざ成美に直接伝えるだろうかと思った。
彼であれば逆に、成美の心配をするのではないかと思い当たったのだ。
――――『可愛い、もっと欲しくなる』
――――『杉崎さんがいい』
彼からの言葉は、少なからず成美に自惚れを与えていた。
故に、彼は優先的に成美の心配をして、あんなメッセージを送ったのではないかと思った。
――――『……美咲……』
また鼻の奥が痛み、目頭が熱くなる。
彼は成美を認識せず、美咲の面影を成美に見たのだ。
わずかにでも自惚れを持ってしまっていた成美には、あまりにもショックな出来事だった。
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