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狭い浴室の湯気の中、ざー、と足元でお湯が弾ける。
温めのお湯が身体を伝い、昨夜の熱を押し流していくのをとても名残惜しく思う。
自分に擦り付けられた彼の匂いまでも、消え去ってしまうから。
けれど、今朝まで自分のいやらしい体液にまみれた身体のままでは当然居られず、目覚めてすぐに浴室へ入った。
ベッドを抜けるとき、彼はまだ寝息を立てていた。
昨夜を思い起こすと、恥ずかしさのあまり、彼とどう顔を合わせればいいのかと困惑する。
彼によって与えられた刺激に耐えきれず、快感の象徴を噴き出したのは、昨夜が初めての体験だった。
(久しぶりだったし、お酒も入ってたし……)
誰に対してのものなのか、自分の醜態への言い訳を頭の中に並べる。
全部をお酒のせいにしてしまいたいかったのに、自宅に帰ってきてからの彼とのいかがわしい記憶はわりと鮮明に残っていた。
彼の色気がメスの本能にけしかけ、女の身体を熟知したような振る舞いが成美の理性を押し退けた。
数多の経験があるわけではないけれど、彼が“巧い”ことは自分の身体の反応を思い出せばわかる。
シャワーに流されず身体のあちこちに染み込んだ彼の指や口唇、舌や彼自身の感触。
お湯の熱とは違うものが、成美の身体の奥からふつふつと沸き上がってくる。
(やだ私ってば、昨夜シたばっかりなのに。しかも、身体凄く満足してたのに……)
むずりと脚の間にほとばしる淫靡な熱を感じて、慌ててキュッとシャワーを止めた。
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