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「水曜と土曜なら日番で夕方には終わるし、日曜は休みだけど、杉崎さんのシフトと合うかってとこだな」
わくわくした様子で悩む聖司に対して、成美はざわざわと胸を騒がせる。
(彼女が居ないのは、いつから? やっぱり美咲と別れてから誰とも付き合わなかったとしたら、彼女を作らなかったんじゃない、作れなかったんだ……)
「どう?」
じっと見据えたままの聖司がにこやかに訊ねた。
「今週水曜なら夕方までの勤務だから、そのあとなら大丈夫。
次の日休みだし、ゆっくりできるよ」
そこまで言って成美は席を立つ。
聞けもしない勝手な憶測に同情する心で、純粋に瞳を輝かせる聖司を直視できなかった。
ティーポットにお湯を足し、「おかわりどう?」と聖司とは目を合わせずに言った。
「いただくよ、ありがとう」と言う彼の湯呑みにほうじ茶を注ぐ。
「杉崎さん」
ティーポットを戻したところで、不意に名前を呼ばれ振り向くと、聖司が来い来いと手招きをした。
可愛らしい仕種にどきりと胸が鳴る。
恐る恐る彼に歩み寄ると、突然腕を引っ張られた。
「きゃっ……」
ふらつく身体に小さく声を上げ、成美は目を瞑る。
怖くてしがみついたのは、彼のたくましい肩。
成美を引っ張った聖司は、彼女を片膝に向かい合うように座らせていた。
「ゆっくり、何するんだよ」
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