見せない心

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「え、何、先生もしかして、妬いてくれてるの?」 「妬かないし、名前呼びもしません」  ちぇ、と尖らせる口が、梓の計算なのだと聖司は知っている。  彼女はこうやって、いつも聖司の気を引きたがるのだ。 「この前のテスト、わざと数字少しずらしていましたよね」 「あれ、バレた?」  はあ、とわざとらしく溜め息を吐いてみせるも、梓はとくに悪びれる様子もない。 「飲み込みは良いんだから、ちゃんとやらないと。どのくらいレベル伸びてるかわからない」 「だってー」 「だってじゃない」  彼女が意図的に数字を下げるのには理由がある。 「あんまりお利口さんにしてたら、先生に叱ってもらえないじゃーん」  ぷうと頬を膨らせ、可愛こぶりっ子する梓に、聖司はあえてきつい眼差しを向ける。 「お前、どうにかしろよ、そのM体質」 「先生のその冷めた目、すごく好き……」 「言ってろ」 「あたしは好きだけど、そんな隠れSじゃ、ちゃんとした彼女いつまでも出来ないよ」 「心配しなくても、彼女なんて作る気ないから」 「ならいいじゃん。梓と先生相性ぴったりで」 「何の話だよ」 「梓は先生に苛められたいし、先生は女の子を苛めたいって話」  テストの話からずいぶんと逸れてしまったと思う聖司の前から、梓はおもむろに席を立つ。     
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