348人が本棚に入れています
本棚に追加
/230ページ
「え、何、先生もしかして、妬いてくれてるの?」
「妬かないし、名前呼びもしません」
ちぇ、と尖らせる口が、梓の計算なのだと聖司は知っている。
彼女はこうやって、いつも聖司の気を引きたがるのだ。
「この前のテスト、わざと数字少しずらしていましたよね」
「あれ、バレた?」
はあ、とわざとらしく溜め息を吐いてみせるも、梓はとくに悪びれる様子もない。
「飲み込みは良いんだから、ちゃんとやらないと。どのくらいレベル伸びてるかわからない」
「だってー」
「だってじゃない」
彼女が意図的に数字を下げるのには理由がある。
「あんまりお利口さんにしてたら、先生に叱ってもらえないじゃーん」
ぷうと頬を膨らせ、可愛こぶりっ子する梓に、聖司はあえてきつい眼差しを向ける。
「お前、どうにかしろよ、そのM体質」
「先生のその冷めた目、すごく好き……」
「言ってろ」
「あたしは好きだけど、そんな隠れSじゃ、ちゃんとした彼女いつまでも出来ないよ」
「心配しなくても、彼女なんて作る気ないから」
「ならいいじゃん。梓と先生相性ぴったりで」
「何の話だよ」
「梓は先生に苛められたいし、先生は女の子を苛めたいって話」
テストの話からずいぶんと逸れてしまったと思う聖司の前から、梓はおもむろに席を立つ。
最初のコメントを投稿しよう!