見せない心

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*  梓が退室してから、聖司は個別指導室のブラインドを下ろす。  黒の窓をシャラシャラと降りるブラインドで白く変えていると、残り半分に背後のドアが開いていくのが映った。 「お疲れさま」  聞き覚えのある上品な声に振り返ることもせず、聖司はブラインドを下ろしきる。  無言で振り返ると、すでに狭い個室に入ってきていた女と、目があった。 「今日は新田先生が戸締まり当番?」 「ええ」  聖司はその女に、素っ気なく答えた。  長い髪をサイドにまとめたスーツ姿の女性。  短いタイトスカートの下で艶かしい足をクロスさせ、扉に寄り掛かる。  机のファイルを抱えて、遠巻きに距離を取りながら、 「……そこ、いいですか?」  通せんぼをしている女に、溜め息混じりに言った。 「ずいぶん急いでるのね。女の子でも待ってるの?」  その問いに、聖司は答えない。  目を合わせず扉に歩み寄ると、苛立ったように掌で扉を叩き、女に影を作った。 威嚇を見せる聖司に物怖じすることなく、女は穏やかに微笑む。 「ね、聖司……」  馴れ馴れしく呼び捨てる女は、聖司の胸元にそっと掌を当てた。 「……今夜……」  するすると下降する細い手が、スラックスに辿り着く。     
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