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ただ見ているだけの聖司の視線に、梓はますます興奮しているようだった。
ルームランプがゆっくりと光量を落としていく中、卑猥な喘ぎ声は音量を増す。
「やぁっ、先生……っ」
高みを目指す音が響き、視覚から性的な刺激が与えられる。
けれど、聖司は手を触れない。
少しも煽られない聖司の横で、梓がびくんと大きく仰け反った。
「ああ……ッ」
シートを揺らし、極まった身体は余韻に震える。
「……ぁ、はぁ、……は……」
乱れた呼吸が車内に充満する。
少し空気を取り込もうとエンジンをかけ、窓に隙間を作った。
「シートベルト、しろよ」
聖司は今の出来事を見てもいなかったように、さらりと言い放つ。
「……先生、冷たい……」
そう言う梓が、決して悪い気はしていないとわかっている。
横目でちらりと見れば、カーステレオの青い光に浮かぶ顔は、満足気に恍惚な表情を浮かべていた。
――――『梓は先生に苛められたいし、先生は女の子を苛めたいでしょ』
いつから自分はそういう感情を持つようになったのか。
少なくとも、初めからそういう嗜好だったわけではない。
大人しく足を下ろし、シートベルトを締める梓を見てから車を発進させる。
音を立てない静かな車が夜の街に出た。
「先生……」
「ん?」
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