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その涙を拭ってくれたのは、他でもない香澄の温かさだった。
温かくてとても小さな手のひらが聖司の頬を包み、優しく撫でてくれた。
自然と二人の距離が縮まった。
労るようなキスは、聖司の全てを攫った。
二人きりの密室。
闇の中で男女が重なり、エンジンのかかっていない車の窓を……曇らせた。
それからすぐに、聖司はバイトに復帰する。
校長は聖司を咎めることはなく、まもなく4月を迎え、晴れて正職員となった。
あれ以来、香澄との関係は続いていた。
仕事が終われば、当然のようにホテルになだれ込んだ。
休日には一日中、彼女の家でごろごろと裸で抱き合って過ごすことも多かった。
「せ、いじ……っ」
「可愛い、香澄さん」
ベッドのシーツをしわくちゃにし、何度も何度も繋がった。
彼女との相性は、とてもいいと感じていた。
聖司を飲み込む彼女のナカは、聖司のカタチにぴたりと型どられているように。
一ノ瀬香澄との関係を続けていくうちに、聖司は自分の心に芽生えるものを感じていた。
それを、惜しみなく彼女に伝えていた。
「香澄……っ、愛してる……」
「聖司、あたしも……っ」
聖司の下で激しく揺さぶられ、それに応える彼女の言葉を信じきっていた。
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