345人が本棚に入れています
本棚に追加
/230ページ
見せない心
手元のファイルを開き、前回のテストの点数と先日のテストの結果を見比べる。
聖司の見立てでは、森永梓(モリナガアズサ)の理解力であれば、この程度の問題くらいもう少し点数を稼げたはずだった。
(まったく……)
軽く溜め息を吐き、狭い部屋の窓を見やる。
とっくに日は暮れ、一台のデスクを挟み空の席に向かい合う自分の影が、真っ黒の窓ガラスに映っていた。
その上には、間もなく22時を指そうかとする壁掛け時計。
秒針の音が聞き取れるほどの静かな部屋に、コンコンとノックが響いた。
「はい」
聖司が応答すると扉が開き、個別指導室に長い黒髪を揺らす女子生徒が入ってきた。
「失礼します」
ナチュラルメイクで清楚な顔立ちをしているが、丈の短いファッションは相変わらず目のやり場に困る。
「どうぞ、座って。……まずはね、森永さん」
「やだ先生、梓って呼んでよ」
椅子に腰掛けながら、梓は上目使いに聖司を見た。
胸元の大きく開いた白ニットは、梓の腕によって柔らかな双丘の膨らみを強調していた。
「ここは予備校でお勉強するとこ。肩と足冷やすような服着てると、男の子達がお勉強に集中できません」
最初のコメントを投稿しよう!