24人が本棚に入れています
本棚に追加
ある日、大学内のスタジオに行く途中……
後ろから ドンッ と背中を押されて、
「きゃぁぁぁっ」
「ユカ!?どうしたの!?」
「……サヤカ……ご、ごめん……最近寝不足でおかしくて……」
ストレスのせいなのか……ここ数日あまり寝られない。
嫌がらせもまだたまにあるから、神経過敏になってるのかも。
「大丈夫!?顔色も悪いよ?」
「大丈夫……ヤエ達、先に来てるよね……」
スタジオの扉を開けて愕然とした。
ヤエとハヤトが呆然と立っていて……
その前には二人の荷物や、破かれたスコアが散らかってる。
ギターとベースの弦も切られていた……。
……あたしの所為だ。
メンバーにまで迷惑をかけてしまった……。
眉間にしわを寄せるハヤトと目が合った瞬間、意識を手放していた。
気付いたら、あたしは上着を枕にしてスタジオ内で横になっていた。
ヤエとハヤトが弦を張り直してるのが目に入る。
「…ごめん!!あたしの所為で……みんなに迷惑かけて……!!」
咄嗟に頭を下げたあたしを、ぎゅっと温もりが包み込む。
「バカ!!なんで何も言ってくれなかったの!?」
「ハヤトから全部聞いた……一人で抱え込まないであたし達を頼ってよ……」
「……サヤカ……ヤエ……」
久しぶりに温もりに触れたような気さえする。
ずっと、心を凍らせて痛みを感じないフリをしてたから……。
二人に抱き締められて、堰を切ったように涙が止まらなくなった。
「ユカは悪くないだろ。悪いのはやったヤツだ……心当たりはあんのか?」
ハヤトの言葉に力なく首を振る。
「…そっか。でもとにかく、これからはあたし達が絶対に守るから!!」
「とりあえずユカは絶対に一人にならない事ね!こんな陰湿なヤツに負けないわよ!!」
みんなの気持ちが本当に有難かった。
メンバー全員が一人で行動したり、荷物を置きっぱなしにしないように徹底して警戒を続けて……。
そのおかげか、今までみたいなコソコソした嫌がらせはなくなった。
その代わりに……もっと直接的な言葉を聞くようになる。
最初のコメントを投稿しよう!