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あなたはスタッフに囲まれ、心理学部の奥にある密室に案内されました。
厳重にカギのかかったドアは、ゆっくり開かれたのです。部屋はふんわりとした素材を壁にし、簡易ベッドと壁一枚隔たれたところにトイレがあります。六畳程度の広さ。
照明は少し暗めで、天井も低く圧迫感があります。食料はチューブ式のゼリーが12個、ベッドの下に置かれていました。
「これより実験を開始します。では」
と、スタッフの一人が告げると、あなたの背後でドアが閉められました。ガチャガチャとカギをかける音がします。
そしてあなたは呆然と立ち尽くしました。思ったより快適ではない場所と、異様な雰囲気にモヤっとした重みが、胸の奥にこみ上げてきました。
簡易ベッドに腰掛けると、天井からアナウンスが入りました。スピーカーが仕掛けられているようです。
「テスト、テスト。聞こえますか?」
ボイスチェンジャーを使ったような、変に高い声が部屋中に響きます。
「ああ、はい。聞こえます!」
「今はどんな気持ちですか?」
「ちょっと狭い部屋で、あまり落ち着きませんね」
「了解」
そう言ったきり、アナウンスは止みました。あなたは少し考えて、とりあえず眠ることにしたのです。疲れたし、ちょっと眠ろうというのはいいアイデアのような気がしました。何もない生暖かいこの部屋。刺激は遮られ、薄暗い、まるで子宮の中のようです。
あなたはぐっすり眠りました。もう、ここがどこなのかも忘れそうです。時間の感覚がじょじょに薄れることを、すでに自覚できません。
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