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ユカも甘えてくるタイプじゃないし、俺達の付き合いは周りから見ると淡白な感じだった。
「お前そんなんで大丈夫なのか?」
「は?どういう意味だよ、タク?」
バンドメンバーのタクは、Halloweensのサヤカと付き合ってる。
「シュンってなんか人前で付き合ってる感出さねえのに、そのクセ他の女ともフツーに肩組んだりスキンシップ多いじゃん」
「お前らがバカップルなんだろ。それに他の女には下心ねーし」
「そういう態度だから勘違いする女が多いんじゃねーの?」
……まぁ、正直なところ自覚はしてる。
まずバカップルだと思われたくないから、人前でベタベタはしない。
ユカの前でも、あんまりデレデレした顔は見せたくないし。
……それに、他の女と絡むのは……ヤキモチを妬かせたい願望ってのはある……。
それは今思うと、アサミがいつも俺にしてた事だった。
結局アサミはマジで他に男がいたんだが……
俺はただ妬いてる顔を見たいだけで、全くやましい事なんかねえしな。
タクには、そのうち捨てられるぞって脅されたけど……
大丈夫だよ、俺は……。
「シュン!ちょっと話があるんだけどいい?」
ある日PINKYのリンに声をかけられ、断る間もなく空き教室に引っ張ってこられた。
「あのね……あたし本当にシュンのこと好きなの!」
……は?
いや、リンの気持ちは薄々分かってはいたが……俺にはユカがいるって分かってるはずなのに……。
しかもコイツの場合、下手にフると面倒くさそうだ。
言葉を探していると、突然リンが顔を覆って泣き出した。
「お…おい、分かってると思うけど俺は…」
とりあえずハッキリ言っておこうと顔を覗き込んだ、その瞬間。
腕が伸びてきて、頭を抱え込むようにして引っ張られる。
思わず体を押し返すと、リンは唇を押さえながら不敵に笑った。
「……キスしちゃった」
「……何考えてんだよ!?俺はユカ以外の女と付き合う気なんかねえよ!」
くっそ…さっきのもウソ泣きか……。
「……ふぅん……でも、もうダメになっちゃうかも……」
「は!?」
「とりあえず、あたしの気持ち覚えててね?」
リンの言葉が気になったが……それ以上は何も言わずに去ってしまった。
もうこれ以上は関わらないに限る。
胸に残るモヤモヤを吹っ切りたくて、ユカに電話をかけたが……コール音が延々と鳴るだけ。
「……くっそ……」
時間を置いて次にかけた時には電話は繋がらなくなっていた。
そしてその後は……もうユカに会う事は出来なかった……。
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