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「それはおめでとうございます。因みに、……女性に聞くのは失礼にあたるかもしれませんけど。お幾つになったんですか?」
「……ありがとうございます。二十歳になりました」
彩から受け取ったクッキーを皿に並べて座り直した円が、少し首を傾げて言った。
「……あまり、嬉しそうじゃありませんね?」
「いえ、……いや、あの。実を言うと、あまり嬉しくないんです」
彩が言うと、円はそうなんですね、といって一口、お茶を飲んだ。
「変だと思いますか? 二十歳の誕生日が嬉しくないなんて」
「いえ、思いませんよ。そんなの、人それぞれで全然、構わないと思います。……だけど」
円はゆるりと微笑んで、彩を見た。
「僕は、誰の、何歳の誕生日でもお祝いしたくなります。だって例えば雨月さんが、二十年前の今日産まれてきてくれなければ、こうしてお話ししてお茶をすることもできなかった。僕にとって誕生日は、その人との出会いに感謝する日なんです」
「……今日、出会ったばかりの私でもですか」
「もちろん」
円は即答した。
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