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驚いた彩はガタンと大きな音を立てて立ち上がり、円も驚いて顔を上げる。
「どうしました?」
「あ、あの、何か首の後ろを擽られた気がして……」
そう言うと、円の目は一層驚きに見開かれた。
「雨月さん。ちょっと後ろを向いてもらえませんか?」
「後ろ?」
言われたとおりに後ろを向くと、円はカウンターから出てきて、彩の背中から何かを取った。
「ありがとうございます。もう大丈夫ですよ」
「何かついてました?」
彩がそう言いながら振り返ると、円の左の手の平に、何か白い毛玉のようなものが浮かんでいるのが見えた。
綿埃、にしては大きすぎるし、もっと密度がある。それに、少し浮いているのも不自然だった。
「……雨月さん」
円は彩の視線が自分の左手に向かっているのを確認して、それから信じられない、と言った様子で彩に聞いた。
「もしかして、これ、見えてます?」
「これって……それですか? その、白いふわふわしたやつ……」
「それです」
円は驚きを隠しきれない様子で彩を見た。
彩は何故驚かれているのかわからずに、ただ首を傾げた。
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