雨模様の誕生日

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 空はどんよりと曇っていて、重たい灰色をしている。今にも雨粒が降って来そうなその雲の下を、彩は早足で歩いていた。  今日は六月六日。梅雨入りしたばかりだというのに、今朝はよく晴れていた。  だからと言って、天気予報もろくに見ないで家を出てきたのが失敗だった。いつもは持っている折り畳みの傘も、今日に限って家に置いてきてしまった。  彩はバスで通勤をしているが、少し着替えに手間取ったせいで、次のバスまでは二十分ほど時間があった。田舎だから仕方がないか、と次のバス停を目指して歩いている最中だ。いつもだったらベンチに座ってバスを待つのだけれど、いつ雨が降ってくるかわからない。  それに、手に持っているケーキの箱も、彩を焦らせる一因だった。  中に入っているのは家族それぞれの好みに合わせて買ったケーキだ。  父にはチョコレートケーキ、母にはアップルパイ、弟にはチーズケーキ、そして自分にはフルーツタルト。雨が降りそうだからといって、あまり急ぐとケーキの形を崩してしまいかねない。     
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