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3
私は他人と話したり、通じあったりすることが苦手。自分の意見を言ったり、誰かに話しかけたり、普通に挨拶をすることにすら物怖じしてしまい、伏し目がちになってしまう。
そんなだから目を合わせたりすることもうまくできなくて、視線を逸らしてしまったりする。
こんな自分が他人と関わること自体が申し訳なく思えてしまって、人付き合いがうまくいかない。要するに自分に自信が無さすぎるんだ。
鳥とか猫とかなら気軽にできるのにな。
そんな私に新学期から気軽に話しかけ続けてくれた椎名めぐみさん。今でこそめぐみちゃんと呼んでしまっているけれど、彼女とは少しくらいは話が出来るようになった。
最初はすごくおどおどして、素っ気なくて、何コイツって思われてもしょうがない態度だったろうに。席が近いのもあってか毎日親身に話しかけてくれて、私の遠慮がちな心をほぐすように、少しずつ距離を縮めてくれた。彼女には本当にすごく感謝している。
いつも明るく元気に接してくれるめぐみちゃんに私は少しずつ心を開くことができて、今ではたぶんだけどお互い友達どうしになれた。少なくとも私はそう思っている。
そんなことを考えていると、めぐみちゃんの席へ近づいてくる人がいた。
「やあめぐみ、ちょっといいかい?」
彼は確か綾小路貴司くんといって、このクラスの委員長でありサッカー部に所属しているクラスの人気者。中心人物。
背が高くて茶髪でカッコいい、んだと思う。周りの女子にも人気あるもの。と言ってもよく他の女子の会話の中に彼の名前が出てくるから、程度の知識でしかないのだけれど。
めぐみちゃんは副委員長なので、クラスの仕事を一緒にやったりしていて、特に最近は休み時間なんかにも度々声をかけに来たりするようになった。
たぶんだけどめぐみちゃんをデートに誘いたいんじゃないかな。
その勇気と行動力は私には絶対に真似できないし、すごいなあとは単純に思うけど。
いつも何かしら理由をつけて断っているところを見ると、少し困っているのではないだろうか。
そう考えるとめぐみちゃんの笑顔が何となくだけれど、本心から来るものではない作り笑いに見えてくる。
そんなことを考えているうちに予礼のチャイムが鳴った。
「じゃあめぐみ。この話は考えておいてくれよ? また今度ね」
「う、うん。またね」
そう言って綾小路くんは席へと戻っていった。
「はー……」
めぐみちゃんは綾小路くんを見送ると深いため息を漏らした。
彼女がそこでため息をつかなければ特に何ということもなく見送っていたかもしれない。だけどそのため息が気疲れから来るもののようにすごく感じられて、私は声を掛けずにはいられなかった。
「めぐみちゃん、だいじょうぶ?」
「え!? あ……、美奈。聞いてたの? やだっ! だいじょうぶって何よ! 別に私は、特に、何も! あ、先生来た!」
教室の扉が開く音と同時に前を向いてしまうめぐみちゃん。思いきって声を掛けてみたけれど、先生が来てしまったらしょうがない。そこで私も先生の方を向いていつもの一日が始まっていく。
本当に大丈夫なのかな。やっぱりめぐみちゃんの素振りはいつもとは違う余裕の無いもののように感じられて、私は一層心配になってしまう。けれどそこで頭に過るのは、私が出張った所で、結局何の助けにもならないということ。
今の私にはどうにかしてあげたくても、どうしてあげることも出来ないんだ。
自分の頼りなさに申し訳なさよりも泣きそうな気持ちが込み上げて来た。
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