2/3
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/3ページ
努力して勝ち取ったという経験をしないまま僕は二十一年も生きてきてしまった。高校受験は第一志望に向かって勉強したが周囲のみんなと比べたら全く努力とは言えなかった。大学受験も第一志望の勉強も全くしないまま落ちたときに先生に気に入られていたから指定校推薦で大学を決めた。欲しい物のためにアルバイトを頑張ったという若者ならではの苦労もしていない。人生で唯一の恋人だった女の子は口説き落としたとかアピールのために何かしたというわけではなく、奇跡的に好きな女の子と両想いだったというだけ。 こんな人生の歩み方でいいのだろうかと悩まずにはいられない。僕の考えはとことん甘い。子供の頃から命を全うしていれば世の中の普通を歩めると思っていた。彼女のいない高校三年の時には、大学生になったらなんの苦労もなく彼女ができると思っていたし、二十歳を過ぎたら大人になっているもんだと思っていた。ちょっと前までとてつもなく悪い成績を取らずに、留年を経験することなく大学四年になったら就職先が決まると思っていた。ちなみに未だにそれは思っている。でもそんな考えの僕がのうのうと生きていけるほど世の中は甘くないらしい。周囲の大人たちは裏で打ち合わせでもしているのかと思えるほど口を揃えて言ってくる。二十歳を過ぎていても一応学生の僕は、大人という生き物がそういう風に社会というものはいかに厳しいかということしか言わないから、不良になる勇気もない僕のような人間達が悩むのだと文句の一つでも言いたくなる。
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!