3/3
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/3ページ
友人に生きる意味を尋ねられた。その友人はなまじ頭が良くてひねくれているがために、意味を見つけられないでいるように見えた。かくいう僕も見つけられているわけではないが、人として生きる上で大事なものは美学じゃないかと思っている。そしてたまに訪れる瞬間的な喜びのようなもののために生きているのだと思う。それは大勢の命を救ったとか地球を宇宙人の侵略から守ったとか大層なものじゃなくていい。チョコレートがおいしいとかゲームで強いキャラクターが手に入ったとか、好きな人の笑顔が見れたとか。そういったありふれた日常の中に咲いている花に見とれるような人生で良いと僕は思っている。目標を持つことも大事だけれどいろんな幸せを捨ててまで目指したい目標が現れることは長くて百年程度しか生きられない人間の人生にはたった一度あるかないかだと思う。 そんな考えの僕だから女性から人気がないのだろう。高身長であっても、やさしさにあふれていても、どんなにハンサムだろうと。だから君はあの日一日中思いつめたような顔をしてあの時僕に帰宅を促したのではないだろうか。自分の人間性の向上心のなさが嫌になって煙草に火をつけた。台所の換気扇に紫煙は消えていった。
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!