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ミーヤ
私の名前はミーヤ。
私の飼い主様が付けてくれた名前よ。
まあまあ気に入っているわ。
まあ、名前なんて何でもいいのだけれど。
それより聞いて。
最近見知らぬ猫が、家の中を我が物顔で歩いているの。
飼い主様からは『サクラ』と呼ばれているわね。
私はそんな名前で呼んであげないけど。
メス猫、もしくは泥棒猫で十分よ。
だってそうでしょう?
飼い主様から一身に受けていた寵愛を、今はあの泥棒猫が横取りしてるのよ!?
私より少しだけ目が大きくて、私よりちょっとばかり尻尾が長いだけじゃないの!
私のまるまるとした短い尻尾の方が可愛いのに!
……少し立場を分からせてあげたほうがいいわね。
私は窓際で外をぼーっと眺めている泥棒猫の背後に、そっと忍び寄った。
「あなた、ちょっといいかしら?」
声をかける。
……微動だにしない。
「ちょっと、あなた!」
私は最初より語気を強めて再び声をかける。
……やはり反応は返ってこなかった。
私は泥棒猫の顔を覗き込む。
ああ、寝てるわ、この子。目を開けたまま。
よく耳を澄ますと、すぴーすぴーと鼻息の音がするわね。
しかもよく見ると、鼻の中のゴミ(私はハナクソなんて下品な言い方はしないわ!)が呼吸に合わせて、出たり入ったりしているじゃない。
……はあ、今日はもういいわ、また日を改めましょう。
興が削がれた私は、お気に入りの寝床小屋に入り込んだ。
あの子、私と同じ淑女猫なのかと思ったけれど、案外そうじゃないのかも。
そんなことを思いながら、私は優雅に惰眠を貪るのであった。
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