サクラ

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サクラ

 ……重い。そして暑い。 あまりの不快感に、私は目を覚ます。 ……なんで泥棒猫(サクラ)が私の寝床小屋(オアシス)にいるのよ。 しかも私の豊満なボデーに体を預けてきてるし。 「なに? なんであなたがここにいるの?」 私は不機嫌な態度を隠さず、問いかけた。 ……起きる気配ないわね。 「ちょっと!」 私は顔をさらに近づけて問いかける。  ペロン。  鼻を舐められた。 そして間髪入れず、私の極上のお腹に顔をうずめてきた。 な、なになに!? 困惑する私を余所に、完全に寝ぼけているこの子は何かを探すように顔を動かしている。 そして目当てのもの(おっぱい)を見つけるや否や、それをちゅうちゅう吸い始めた。 手はもみもみと、私のビューティフルなお腹を揉みしだいている。 「やめなさい! このおバカ!」 私は目の前の血迷ったおバカの体を引きはがそうと、後ろ足でげしげしと蹴った。 そうすると、おバカは引きはがされまいと、更に吸引力を増していった。 「ひいー! お助けー!」 私は思わず逃げ出した。 大事なところが取れちゃうかと思ったわ。 まだ子供を生んだことないのに。 使い物にならなくなったらどうしてくれるのよ! 恨めし気に、追放された寝床小屋を見やる。 ……あの子、敷いてあるタオルケットを吸ってるわ。 タオルケットはあの子の涎でびちゃびちゃになっている。 そんなことされたら、もうそこで寝れないじゃない! あの子はうっとりとした顔で吸い続けている。 まだ起きていない。 完全に極楽気分ね……。  はあ。 なんでこんなことになってしまったのだろう。 私は泥棒猫(サクラ)に体を辱められた上、楽園から追放された。 あの子に立場を分からせようと、少しきついことを言おうとした罰が当たったのかしら。 いえ、私にだって立場というのがあるのだから、それはしょうがないじゃない! というか、そもそもきついこと言ってないし……。未遂だし。 それはそうと、私の寝る場所どうしようかしら……。  部屋中歩き回り、不本意ながら飼い主様たちが普段座っている椅子を、 一時的な避難地と定めた私は、体を丸めて不貞寝した。 ……椅子、硬いよお。
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