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「…へ?」
「俺も,彼女いるから分かんだよ。時々不安になったり,相手を疑ったり,そういうの。二次元にはねえもんな」
唯はそれで納得がいった。お兄ちゃんが,教えてくれた。
…そっか,コレが本当の恋ってヤツなんだ。
「だーかーらぁ」と,兄は唯の肩をポンと叩いた。
「迷惑かけたくないから別れるとか,んなこと言うなよ。明日,ちゃんと彼氏と向き合えよ」
唯は「うん」と頷いたあと,本音を洩らした。
「けどわたし,彼にどんな顔して会えばいいか分かんないよ。電話,着拒しちゃったし」
☆☆☆☆☆
翌日の放課後。
朝からため息ばかりついて過ごしたこの日,唯は足取り重く,しとしと雨が降る中を下校しようとしていた。
こんな沈んだ気持ちの日なのに,傘は鮮やかな赤色。
「唯ちゃん」
聞き覚えのある声に顔を上げると,校門の外に浩介が立っていた。
コンビニで買ったらしい,透明なビニール傘を差して。
「ケータイ繋がらないから,来ちゃったよ。ここに来ればさ,唯ちゃんに会えると思って」
唯はとうしていいか分からず,通り過ぎようとした。
「待てよ,唯ちゃん。なんでオレのこと避けようとすんの?」
何故そこで足を止めたのか,唯自身にも分からなかった。
「わたしのこと,からかってたんでしょ?お友達と」
唯は,言ってしまってからハッとした。けれど,唯の意思などお構いなしに,勝手に言葉がポロポロ出てくる。
「電波オンナとか,アタマ腐ってるとか!そう言ってわたしのことバカにしてたんでしょっ!?」
違う!違う!違う!唯の中のもう一人の唯が,頭の中で叫んでいる。
唯が本当に言いたいのは,こんなことじゃないのに。
泣くつもりなんてなかったのに,勝手に涙がこぼれてくる。
こんなんだからわたし,お子ちゃまみたいに思われるんだ。
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