2、島谷壮太

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(今日、もし相原が家に来てたら、一体どうなってたんだろう)  本当にただゲームを見たいだけかもしれない。女はしばらくいらないとも言っていたし。  けれど壮太が言っていたように、万が一ということもある。 (私はどっちを望んでいたんだろう)  記憶の中の相原の顔に何かを見出そうとしたけれど、結局沙和にはできなかった。 ◆  次の日、沙和が目が覚めたのは十時をすぎた頃だった。三時すぎまでゲームをして眠りについた割には早い時間だ。  布団をかぶった時にそばにあったぬくもりは消えている。壮太はもう起きているようだ。廊下から何やら音がする。 (あれ、朝やるって言ってたのは、どうしたんだろう。気が変わったかな)  大きく伸びをしてから、沙和はベッドから抜け出した。部屋はエアコンのおかげで既にあたたまっている。ぼさぼさの髪を少しだけ直していると、ドアが開いて壮太が顔を見せた。 「おはよう。朝ごはん、目玉焼きでいい?」 「ん、ありがとう」 「あいさー」  壮太はキッチンへと戻っていった。卵を割る音、フライパンがジュッと鳴る音がする。朝だなぁなんて当たり前のことをぼんやり思い、沙和は顔を洗うために洗面所へと足を向けた。 「いつもありがと」  冷蔵庫をあけて付け合わせの野菜を吟味している壮太に声をかける。彼は沙和の部屋に泊まりに来た翌日は、朝食を作ってくれるのだ。今日のメニューは食パンに目玉焼き、あとベーコンも一緒に焼くようだ。  その食パンも、壮太が手土産に持ってきた高級パン屋のものだ。  彼の職場は丸の内なので至るところに銘店があり、いつも何かしら手土産を持ってきてくれる。おかげで沙和は丸の内の美味しいパン屋やケーキ屋などに、妙に詳しくなった。自分自身はほとんど行ったことないのだが。  顔を洗って部屋に戻り、ローテーブルの上を片付けている内に、壮太が「おまたせ」とトレイに朝食を乗せてやってきた。ふわりと漂う香ばしい香りとコーヒーの香りに、自然と目が細まる。 「寝て起きたらごはんが出てくるって最高だなぁ」  こういうのがあるから、壮太の訪問も悪くはないとか思ってしまう。現金なのはわかっている。  丸いローテーブルに沿って隣り合って座り、二人で手を合わせる。一緒に朝食をとる時の習慣で「いただきます」ときっちり挨拶してから、沙和は箸を手にした。
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