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27、告白
時刻は十時半を過ぎたくらい。
あの後沙和もシャワーを浴びて、椎名と似たような格好になって戻ってくると、彼はソファに座りスマホをいじっていた。
「望月さん、スマホ見てくれますか?」
「ん?」
言われてバッグの中からスマホを取り出すと、壮太からメッセージが届いている。ご丁寧に椎名と三人でのグループトークが設定されていて、壮太から「椎名はちゃんと帰った!?」とのメッセージが表示されていた。
「壮太ってば……」
心配性というか、なんというか。
きっとこのメッセージは、改札で別れた時のような悔しげな表情で作ったのだろう。容易にその様子が思い浮かんで、苦笑いがこぼれる。
「俺、返信いれていいですか?」
「もちろんいいよ。ていうか、別にそれ私に聞かなくていいから」
チェストの上にスマホを戻して髪をふいていると、椎名からの『終電なくなったから』とハートマーク付きの返信が表示された。即座に『嘘つけ!帰れ!』と壮太が怒った猫のスタンプを送ってくる。
『嘘じゃないよ(ハート)』
『怒!』
壮太からの嵐のようなスタンプ攻勢にひるむことなく、椎名も互角にやり返している。
(は、速すぎてついていけない……!)
あまりに高速でやりとりが進んでいくので、沙和は目を丸くしてひたすら更新されていくグループトーク画面を眺めることしかできない。二人してどれだけスタンプの種類持ってるんだと呆れるほどだ。沙和なんて、初期設定のものしか使わないというのに。
内容がまるでない子供じみたやりとりに頭が痛くなってくる。変なところで案外二人は波長があうのかもしれない。
沙和は全ての流れを無視して『とりあえず椎名君はいるけど心配無用』とだけ送って、スマホの電源を切った。
「あとは二人で適当にやって」
椎名にそう言って洗面所に向かう。ドライヤーをかけて戻ると、椎名はまだスマホを連打していた。
「あーもう、しつこいっ」
これで最後だ! と叫ぶなり椎名は画面をタップすると、電源を落とした。
「……ふう……」
椎名はこのやりとりで労力を削られたようで、前かがみになり肩で息をしている。お疲れ様と言うべきなのかと一瞬よぎったけれど、いや違うなと沙和は思い直して「椎名君、ドライヤーかけたら?」と声をかけた。
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